大腸ポリープ切除
大腸ポリープ切除は、内視鏡を用いて大腸内に発生したポリープ(腫瘍性または非腫瘍性の隆起)を切除し、がん化を防いだり症状の進行を抑えたりするための治療法です。
大腸ポリープは加齢や生活習慣など様々な要因でできやすく、放置すると大腸がんに進行するリスクが高まります。
本ページでは、大腸ポリープ切除に関する基礎知識から、具体的な手術方法、術後の過ごし方、予後などを分かりやすく解説します。
大腸ポリープとは
大腸ポリープとは、大腸の粘膜上にできる隆起性の病変の総称です。
形状はイボのようなものから平坦型まで多岐にわたり、サイズも数ミリ程度の小さなものから数センチに及ぶものまで様々です。
大腸ポリープは良性(腺腫性ポリープなど)と、よりがん化リスクが高いもの、あるいは既にがんを含むものなど多様なタイプがあります。
大腸ポリープの原因
大腸ポリープの発生には以下のような要因が関係するといわれています。
- 加齢
- 脂質や動物性たんぱく質に偏った食事、野菜や食物繊維の不足などの食生活
- 家族性大腸腺腫症(FAP)や特定の遺伝性疾患などの遺伝的要因
- 喫煙、飲酒、運動不足などの生活習慣
- 慢性的な便秘や腸内フローラの乱れなどの腸内環境
大腸ポリープの症状
多くの場合、大腸ポリープは無症状です。
そのため、健康診断や人間ドックの大腸内視鏡検査で初めて発見されるケースが少なくありません。
しかし、大きなポリープができたり、ポリープから出血したりすると、以下のような症状が現れることもあります。
- 下血(血便)
- 便秘や下痢などの便通異常
- 腹痛や腹部違和感
こうした症状が出ても、必ずしも大腸ポリープやがんとは限りませんが、早期発見・早期治療のためにも定期的な検査を受けることが重要です。
大腸ポリープ切除の方法
大腸ポリープの切除は、一般的に大腸内視鏡を使用して行われます。
以下では代表的な切除方法と治療の流れを紹介します。
内視鏡的ポリープ切除術
内視鏡的ポリープ切除術は、2cm以下の比較的小さな有茎型・半有茎型ポリープに適しています。
内視鏡先端のワイヤー(スネア)をポリープの根元にかけ、高周波電流で焼き切るため、短時間で済むことが多く、日帰りや短期入院で対応できるケースもあります。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
2cm以上の大きめのポリープや平坦型の腺腫などに対して行われる方法です。
粘膜下層に生理食塩水などを注入して病変を持ち上げ、スネアで一括切除します。
切除した組織を病理検査に提出できるため、がん化の有無を正確に調べられる点がメリットです。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
3cmを超える大きなポリープや早期大腸がんが疑われる場合に用いられる高度な手技です。
特殊な電気メスで粘膜下層を剥離しながら病変を一括切除するため、正確な病理診断が可能ですが、技術的に難易度が高く、時間がかかることがあります。
外科的切除
内視鏡での切除が困難なほど大きいポリープや、腫瘍が深く浸潤している可能性がある場合に行われる手術です。
腹腔鏡下手術や開腹手術で病変部位を含む腸管を部分的に切除します。
内視鏡処置より体への負担は大きいものの、がんを確実に取り除くために必要とされる場合があります。
大腸ポリープ切除の流れ
検査前日・当日
前日は下剤などを使用し、腸内をきれいにします。
検査当日は検査開始数時間前から絶食し、水分以外の摂取を避けます。
大腸内視鏡検査
大腸内視鏡を肛門から挿入し、大腸の隅々まで観察します。
ポリープが発見されたら、その場で切除できる場合は切除を行います。
切除後の観察
切除後は出血や穿孔(腸に穴が開くこと)などの合併症がないか確認します。
日帰りの場合でも数時間は院内で安静にしてから帰宅することが一般的です。
病理検査
切除したポリープは病理検査に回され、良性か悪性か、がん化の有無など詳細が判定されます。
検査結果に応じて追加治療の必要性が判断されます。
大腸ポリープ切除後も、再発や新たなポリープ発生のリスクは残るため、定期検査のタイミングに合わせて、大腸内視鏡検査や便潜血検査を受けるようにしましょう。
大腸ポリープ切除のよくある質問
ポリープを放置しても問題ありませんか?
大腸ポリープは、良性のものも含めて時間が経つにつれがん化リスクが高まる可能性があります。
特に「腺腫性ポリープ」は放置するとがんに進行しやすいとされています。
初期の段階では症状がほとんどないため、定期検査でポリープが見つかった場合は、早めに切除しておくことが大腸がん予防において非常に重要です。
大腸ポリープ切除は日帰りでできますか?
病院やポリープの大きさ、形状、患者さんの体調によって異なりますが、多くの場合は日帰りあるいは1泊程度の入院で対応可能です。
比較的小さいポリープで合併症のリスクが低い場合は、日帰りで切除し、数時間程度の経過観察後に帰宅できるケースが増えています。
ただし、大きなポリープや複数のポリープを切除する場合は入院が必要となることもあるため、主治医と相談のうえ手術方法を決定します。
どのような合併症が起こり得ますか?
内視鏡による大腸ポリープ切除は比較的安全性が高い治療法ですが、まれに以下のような合併症が起こることがあります。
- 出血:切除部位から出血が続くことがありますが、多くは内視鏡による止血処置が可能です。
- 穿孔(せんこう):腸に穴が開くリスクは低いものの、万一発生した場合は緊急手術が必要となる場合があります。
- 感染:切除面から菌が入ることで発熱や腹痛が生じることはごくまれですが、念のため症状が出た場合は早めに医師へ相談してください。
切除後は普通の生活にいつ戻れますか?
切除後の回復には個人差がありますが、以下を目安にしていただくと良いでしょう。
食事:切除当日は消化にやさしいものを中心に、翌日以降は徐々に通常食に戻します。
運動・重いものを持つ:術後1週間程度は激しい運動や重い荷物を持ち上げることは控え、様子を見ながら少しずつ日常生活に復帰していきます。
飲酒・喫煙:出血リスクを高める可能性があるため、医師が許可を出すまでは控えるのが望ましいです。
状況によっては入院期間や日常生活への復帰のタイミングが異なるため、主治医の指示に従いながら体調を見極めて生活を調整してください。
まずはお気軽にご相談ください
内視鏡検査は、早期発見や予防医療において非常に重要な検査です。
少しでもお身体の異常を感じたら、検査をおすすめします。