「脱腸」「鼠径ヘルニア」と言われたら
いわゆる「脱腸」とは、「鼠径ヘルニア」のことを言います。「脱腸」という病名から「腸の病気」と思われる患者さんも時々おられますが、正式には「鼠径ヘルニア」という病名で腸の病気ではなくて、腹壁の病気です。病気というよりは、腹壁の構造上の問題で、良性のものでありますから適切な治療を行えば危険な病気ではありません。ただし、放置して「嵌頓」という状態になった際には早急な治療が必要となります。そうならないように早めの診察を受けてください。
「鼠径ヘルニア」とは
そもそも「ヘルニア」とは組織が正常にあるべき部位から隔壁の弱い部分あるいは筋肉の脆弱な部位を通過して、非生理的な位置に脱出することです。 「鼠径ヘルニア」は鼠径管というお腹の筋肉の弱い部分をとうして腸がお腹の中からはみ出してきたものです。(鼠径管とは:赤ちゃんの精巣や卵巣は赤ちゃんが母親の胎内にいるときには、まだ自分のお腹の中の高い位置にあるのですが、産まれてくるまでにだんだんと下降してきてそれそれの指定席にきます。その際に通った筋肉の隙間で、トンネルのような構造になって、それを鼠径管といいます)
「鼠径ヘルニア」の症状とは?
こんな症状があれば鼠径ヘルニアが疑われます。
●下腹部に膨らみがある
●立っている時や、お腹に力を入れた時に膨らみがつよくなる。
●横になると膨らみがなくなる
どんな治療が必要ですか?
飛び出した腸を戻して、出てきた穴を塞ぎ、腸が出てこなくなるような手術をし ます。自然に治ることはありません。穴を塞ぐ手術として、多くの方は「メッシュ」あるいは「プラグ」など人工的な素材で補強をすることになりますが、中には人工的素材の使えない方や、あるいは「メッシュ」等にもいくつかの種類があり、その人にあった方法の選択が必要になります。
手術について
ヘルニアの手術としては基本的には脆弱な部分に生じた穴を塞ぐということになります。手術時間はおおよそ30分~1時間くらいで、下半身麻酔で行います。
当院での手術の特徴
沢山の術式や機材の進歩があり手術自体はとても安全なものでありますが、人によって体の状態が異なります。例えば何かしらの理由で局所の感染がありメッシュの使用が困難な場合や、心臓の病気で電気メスの使用が制限される場合や、血液をサラサラにする薬を飲んでおられる方など、様々な対応が必要です。あるいは、背骨の病気(圧迫骨折などをして背骨のつぶれている方や、手術でプレートが入って いる等)で下半身麻酔の困難な方や、手術中の音などに耐えられない方など、手術中の安静が保てない方、認知症が心配な方などで全身麻酔が必要な方もいます。当院には、充実した入院施設がありますので、その人の体力やご家族の看護状況などに合わせて、入院での対応も行っております。また、前立腺癌や膀胱癌の手術後のヘルニアや、その他の腹部手術後で腹膜炎を患い、腹膜の癒着の強い方、あるいは腹膜透析をされている方などの多数の手術実績があります。
診察から手術、その後の診察の流れについて
1. 初 診
異常を感じたら外科外来を受診してください。
「ヘルニア」で手術適応と診断された場合、手術日程の打ち合わせを行います。
2. 術前検査
ご本人の近日のご予定が立てられる場合は、同日中に術前検査(採血、レントゲン、心電図等)を行います。
(ご予定の立てられない方や、合併症のある方などで精密検査が必要な方などは必要に応じて後日外来を受診していただくこともあります。)
3. 入 院
手術前日の入院となります。ご希望があれば当日の入院に変更も可能です。
4. 手 術
※当院での手術日は火曜日、木曜日、金曜日です
5. 退 院
術後、1~3日で退院になります。
6. 手術後
術後一週間に外来を受診していただきます。問題がなければ終了になります。
手術後の日常生活・注意事項
術後2~3日で通常生活が可能となりますが、運動などについては医師の指示に従いながら徐々に運動量を増やしてください。入浴に関しては2日目からシャワーなどは可能となります。
当院での術式について
当院では各症例に応じて様々な術式を選択しております。多くの症例では「パッチ」などでの補強を行います。
メッシュ・プラグ法
下腹部手術歴のある方や困難症例(脱出腸管大きなものなど)や腹膜透析歴のある方などにも行います。
クーゲルパッチ法
通常の鼠径ヘルニア(外鼠径ヘルニア)のほか、直接型(内鼠径ヘルニア)や大腿ヘルニアなどと呼ばれるヘルニアにも適しております。
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TEL. 042-986-1110
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