Olive
医療法人社団 輔正会 岡村記念クリニック 在宅・訪問診療部門
MESSAGE / 部門長 所信表明

「見送る医療」から、
「迎える医療」へ。

在宅・訪問診療部門 Olive(オリーブ)部門長 小山 政史

はじめまして。2026年4月より岡村記念クリニック診療部長として在宅・訪問診療部門「Olive」を担当しております、小山政史と申します。このたび、地域の皆さまに私たちOliveの想いをお伝えしたく、ここに所信を表明いたします。

岡村記念クリニックの理念に寄せて

岡村記念クリニックは、院長である岡村維摩先生が「患者が受ける医療は、アメニティーによって高められる」というモットーのもとに設立されました。高度の医療は、充実した検査機器や設備だけでなく、的確な診断、こころのこもった看護、高い技術、そして快適な環境が揃って初めて成立する——その信念を、岡村先生は開業の日から一貫して貫いてこられました。私はこの理念に深く共感し、ここで働くことを決意いたしました。

なかでも、岡村先生が掲げる「いかに患者さんに手をかけられるか」というテーマに、私は強く心を動かされました。この言葉は、単に医療技術の質を高めるということにとどまりません。「手をかける」とは、手を通したふれあいによって心と心を通わせ、患者さんの尊厳をまもることを意味していると、私は理解しています。

そして「尊厳をまもる」とはどういうことか。私はこう考えます。それは、患者さんが大切にしていることを尊重し、患者さんが嫌に思うことをしないでさしあげること。シンプルですが、このことを医療の現場で徹底することは、実はとても難しく、だからこそ最も大切なことです。

「退院、おめでとうございます」の先にあるもの

私はこれまで、総合病院や大学病院で主にがん治療に携わってまいりました。1993年に慶應義塾大学医学部を卒業後、泌尿器科の領域で臨床と研究を重ね、米国クリーブランドクリニックへの留学を経て、約20年にわたり埼玉医科大学国際医療センター泌尿器腫瘍科にて膀胱がん、腎がん、前立腺がんをはじめとする泌尿器がんの診療・研究・教育に従事してまいりました。副医学部長として医学教育の質保証にも携わり、多くの後進の育成にも努めてまいりました。

急性期病院における私の使命は、明確でした。それは、「患者さんの命を救うこと」です。手術が成功し、退院の日を迎えた患者さんとご家族に、私は「おめでとうございます」と声をかけてきました。笑顔でお見送りをする——それが私にとって、医師としての喜びの瞬間でした。

しかし、長い臨床経験の中で、私はあることに気づかされるようになりました。命は助かった。けれども、その代償として合併症や機能低下により、日常生活を送ることが困難になる患者さんが少なくないということを。病院にとって「退院」はめでたいことかもしれません。しかし、患者さんやご家族にとっては、退院の日こそが新たな苦難の始まりであることも多いのです。「おめでとうございます」の先に、どれほどの困難があるか——私は、退院していく患者さんの背中を見送りながら、そのことを痛切に感じてきました。

「見送る」側から「迎える」側へ

これまで私は、急性期の病院から患者さんを「見送る」側にいました。残りの医師人生において、私は立場を変えることを決意しました。命は助かったけれど、生活する上でさまざまな問題を抱えている患者さんやご家族を「迎える」側に立ちたい。退院後の不安の中にある方々に寄り添い、ともに歩む医療に従事したい。長い歳月をかけて積み重ねた専門知識と臨床経験を、今度は在宅の現場でお役に立てたい。その想いが、私を岡村記念クリニックへと導きました。

住み慣れた場所で、最期まで自分らしく

住み慣れた地域で、思い出がつまった場所で、最期まで自分らしく過ごしたい——そう願う患者さんやご家族の想いに寄り添える訪問診療を、私は目指します。

患者さんのご自宅には、病院では決して再現できないものがあります。家族との長い歴史が刻まれた居間、毎朝見てきた窓からの景色、台所から漂う食卓の匂い。それは、院長の言葉を借りれば、最上の「アメニティー」です。その大切な空間を尊重しながら、私たちは医療をそっと添えてまいります。

なぜ「Olive」なのか

私たち岡村記念クリニック一同の想いを込めて、在宅・訪問診療部門に「Olive(オリーブ)」という名前をつけました。オリーブの花言葉は「平和」「希望」「知恵」。古来より、オリーブの一枝は嵐の終わりと新たな始まりのしるしとされてきました。病という嵐の中にあるご家族のもとへ、私たちが静かに平和と安心をお届けする——そんな存在でありたいという願いを、この名に込めています。

オリーブの木は、千年を超えて根を張り続けます。私たちもまた、この地域に深く根を張り、長く皆さまのそばにあり続ける存在を目指します。

地域の皆さまへ

訪問診療を通して、私たちは「安心して暮らせる豊かな地域づくり」に貢献してまいります。がん治療の専門医として培った知識と経験を、在宅での緩和ケアや疼痛管理に活かします。訪問看護ステーション、ケアマネジャー、薬剤師、地域の医療・介護・福祉の皆さまと深く連携し、患者さんとご家族を多くの手で支える体制を築きます。24時間対応の在宅療養支援診療所として、夜間も休日も、いつでもつながる安心を提供します。

そして何より、一回一回の訪問に、岡村先生が大切にされてきた「人の手を使った診療」の精神を込め、患者さんお一人おひとりの尊厳を大切にする医療を実践してまいります。

どうぞ、お気軽にご相談ください。
私たちOliveは、ここにおります。
2026年4月
医療法人社団 輔正会 岡村記念クリニック
在宅・訪問診療部門 Olive(オリーブ)
部門長 小山 政史